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北アルプス縦断 上高地~槍ヶ岳~親不知(後半2016年7月26日~30日 新越山荘~親不知まで)

  • 篠原
  • 2016年7月26日
  • 読了時間: 11分

篠原単独

5日目|新越山荘~種池山荘~冷池山荘(ほぼ停滞)

ラジオやテレビの予報によると、今日は、強風・雷注意報が出ているようである。本日の計画では、八峰キレットを通過する予定であったが、この天気では厳しそうであるので、冷池山荘まで行くことにする。

朝から雨が降る中、6時に出発。簡単であまり起伏がない道を歩き、7時40分に種池山荘に着いた。

ガスで視界もないので、爺ヶ岳の山頂には行かずに、巻道を通り、冷池山荘に到着。

この日は、同じく冷池山荘で停滞していた人が多かったので、談話室で暖をとりながら、いろいろと話をしたりした。

6日目|冷池山荘~鹿島槍ヶ岳~五竜岳~唐松岳頂上宿舎

今日は、北アルプス縦断の核心部のうちの一つである鹿島槍・五竜岳の八峰キレットを行く。本や雑誌で読むと、難しそうに見えてくるけれども、やはり実際に歩いてみないと、その難易度はよく分からない。

6時頃に、弱い雨が降る中、冷池山荘を出発する。ガスがあり景色も楽しめず、黙々と歩く。

7時20分頃に、鹿島槍の南峰に到着。ここから先は、岩場である吊り尾根となるため、トレッキングポールをしまい、ヘルメットをつける。

吊尾根は、岩が雨に濡れているため、気を付けながら進む。ルート自体は、マーキングも多く、迷うこともない。北峰は、時間の問題もあり、パスした。

八峰キレットは、これでもかというほどに、鎖が張り巡らされている。道自体は、それほど難しくはないけれども、滑落すると、何百メートルも落ちて、命はなさそうなところであるので、念のために、ゆっくりと慎重に行動する。こんな岩場であっても、高山植物は美しく咲いていた。

しかし、核心部は短く、気づくと、キレット小屋に8時45分に着いた。

キレット小屋は、断崖のようなところに建っている小屋である。小屋では、コーヒーを頂き、温まり、体力と集中力を回復させた。

この先も岩場が続く。しかし、難しくはない。天気も回復していき、岩が乾いてきたので、歩きやすい。ただし、ガスはとれることがなく、展望はない。

しばらく歩き、北尾根ノ頭という、休憩に適した場所で休む。

ここから五竜までは、登りがけっこうありきつい。G5、G4などと名付けられた岩場があるものの、特に難しくはない。五竜岳直下のガレ場は、他に登山者がいる場合には、落石に注意する必要があるところである。

五竜岳には、11時50分に到着。周りは、あいかわらずのガスの中であったけれど、ほんの短い間ではあるが、ガスが切れて、青空を見ることができた。

五龍岳から五龍山荘への下りは、簡単な道と思いきや、意外と難しかった。鎖は設置されていないものの、滑落すると危険なトラバースなどもあり、気をつけながら下った。

五龍山荘から唐松岳への道は、一転して穏やかで気持ちがいい尾根である。ガスも、五龍方面には、まとわりついているものの、唐松の方向ではそれほどしつこくはなく、山容もそれなりに楽しむことができた。

ただし、唐松岳頂上宿舎の手前の牛首といわれているところは、ちょっとした岩場である。

唐松岳頂上宿舎に14時50分に到着。昨年くらいに新館が建てられたということで、施設はとてもきれいであった。宿泊客は、登山者は少なく、ほとんどはロープウェイからの観光客であった。

宿舎の近くには、高山植物が咲いているところがあった。

夕刻になると、鹿島槍の双耳峰が幻想的にその姿を浮かびあがらせていた。八峰キレットを通過しているときは、山容なんて見られなかったけれど、この景色を望めれば、もうそれだけで十分と思えるくらいに、このときの鹿島槍は美しかった。

7日目|唐松岳頂上宿舎~唐松岳~不帰嶮~天狗山荘~白馬三山~雪倉岳~朝日小屋

今回の北アルプス縦断の前半の核心部は、3日目の野口五郎小屋~船窪小屋であった。これに対して、後半の核心部は、7日目の唐松岳~朝日小屋であった。この日の行程は、相当長くて、また、不帰ノ嶮という難所もある。この日は、今回の縦走で、唯一、12時間近く行動した日であった。

5時に唐松岳の頂から不帰ノ嶮に歩き始める。

不帰は、西風を受けて、荘厳に煙を吐き出しているようである。

慎重に足を踏み入れたものの、三峰までは、特に危ないようなところはない。人もよく歩いているため、道もはっきりとしている。

しかし、二峰の辺りからは、少し高度感もある岩場が出てくる。鎖はしっかりとしている。ただし、岩が濡れているところもあるため、滑らないように注意する必要があった。

一峰からの下りが核心部。唐松から白馬に縦走する場合には、不帰ノ嶮の核心部が下りとなるために、難易度が上がるとされている。

切れ落ちた岩場に架けたハシゴのトラバース等の危険個所が続く。

そして、けっこうな角度がある岩場をしばらく下りていく。

つづら岩等で、岩登りの基本的練習を行っていたので、足の置き方には困らなかった。この核心部を下りきると、後は、緩やかな尾根をコルまで歩いていき、休憩する。

黒部峡谷を挟んで、剱岳が格好良く聳えている。

コルからは、「天狗ノ大下り」を登り返す。ここの登りは大変であるとも聞いていたけれど、それほどのものでもなかった。ただし、ガレ場が続くので、落石を起こさないように気をつける必要はある。

「天狗ノ大下り」を登りきると、天狗の頭を経て、気持ちのいい天狗尾根に出る。

この穏やかな道をしばらく歩き、天狗山荘に8時30分に到着した。

天狗山荘には、小学4~5年生くらいの子供とその父親に出会った。これから不帰ノ嶮に行くということのようで、小学生で不帰ノ嶮とは、相当な英才教育だと驚いた。また、この日の朝3時に白馬駅から走ってきたという人にも会った。いろいろな人達がいるんだなと感じた。

天狗山荘で一休みしてから、鑓ヶ岳に向かう。ここからは、鑓ヶ岳はとても大きく見えて、登るのに時間がかかりそうに見えてしまう。しかし、実際には、マップでも1時間であり、歩いてみると、思ったより体力を使わずに頂に立てた。

昨年白馬三山に来たときには、ガスで展望が全くなかったけれど、今日は景色を十分に楽しむことができた。

白馬三山にくると、急に登山者が増えてくる。特に団体客が多い。それほどに、やはり白馬三山のネームバリューは大きいということであろう。

今日の目標は、朝日岳であるため、白馬三山は早歩きで進む。杓子岳のピークも、昨年踏んでいるため、巻道を通りパスする。

けれども、白馬頂上宿舎への登りで、急に疲れがでてきて、歩くスピードが相当下がり、ふらふらする。周りの高山植物に励まされても、それでもきつい。視界に白馬頂上宿舎が入ってからも、なかなかたどり着かず、まいってきたが、それでも10時50分に宿舎に着いた。予定であれば、ここには10時30分までには着きたかったので、途中でバテてしまった影響で、遅れてしまった。

ここで、これからの予定について、相当悩んだ。唐松から白馬頂上宿舎まで、5時間弱で歩くことはできたものの、すでにヘトヘトで、果たしてここから朝日小屋までの長い距離を更に歩くことなんてできるのであろうか。そんな自信は全く湧いてはこなかった。安全を考えれば、ここから大雪渓を下ってしまうのがよいのかもしれない。そうしたら、今日中に、白馬の温泉に入り、家に帰ることができる。けれども、一方で、北アルプス縦断をここで諦めてしまうと、もう人生において縦断に挑戦する機会なんてないかもしれない。たとえ、再度チャレンジする機会があったとしても、そのときのコンディションや天候によっては、やはり縦断は難しい可能性がある。それに、今回の旅で、出会った人々、特に船窪小屋で会った方々に励まされたことを思い出すと、縦断を達成したい気持ちも強い。結局、ここでは、朝日まで行くかの判断がつかなかったため、とりあえずは、白馬の頂までゆっくりと歩いてみて、コースタイムの3分の2の時間で歩けた場合には、朝日まで進むことに決めた。

再び歩き始めても、けっこうフラフラ。それでも我慢して歩いていき、白馬に11時40分に到着。タイムは、ちょうどコースタイムの3分の2であった。そのため、朝日まで歩くことにした。

山頂で少し休んだ後、朝日の方に下り始める。尾根は広く歩きやすい。白馬三山とは異なり、朝日までの縦走路は、人が少なくて静かでよい。

鉢ヶ岳の巻道には、高山植物が咲き誇っていた。白馬三山より、朝日縦走の方か、景色の見応えがあるように感じた。

雪倉岳避難小屋の少し手前で休憩する。雪倉へは、避難小屋から50分となっていたが、一歩ずつ自分のペースで登っていくと、思ったより早く13時35分に頂に立てた。ここから先は、朝日小屋まできつい登りはない。なんとか無事に到着できそうだと思う。

雪倉からは、しばらく下り道である。ライチョウが何羽かいた。途中で雨が降ってきたものの、数十分でやんでくれた。ある程度下りると、あとはアップダウンの繰り返しのような道である。ツバメ平から見える巨岩は迫力があった。

その先からは、木道もあり、湿原地帯が続く。水平道分岐で休憩する。しかし、虫が多くて、ゆっくり休むことはできない。

そこから、さらに水平道を進んでいくと、やっと丘の上に朝日小屋が見えた。今日は本当に長い山行であったので、無事に歩けたことに安堵する。小屋の到着は16時30分であった。

8日目|朝日小屋~朝日岳~栂海山荘~白鳥小屋

朝日岳から日本海の親不知までの登山道は、栂海新道と呼ばれている。地元の「さわがに山岳会」が拓いたルートである。白馬からつなげば、3000mの北アルプスから一気に日本海まで下ることができ、近年、その人気は高まっている。一度は行ってみたい縦走路にも取り上げられることが多い。しかし、その高低差はもちろんのこと、縦走路としての距離も比較的長いため、健脚者向けのコースといわれる。

朝日小屋から出発する場合は、一般的には、栂海山荘に一泊し、翌日に親不知に下山することが多い。今回は、その栂海山荘より先にある白鳥小屋を目指し、そこに泊まることにした。栂海山荘から白鳥小屋までは、アップダウンが激しく、一度気合を入れなおして歩く必要があるようである。

朝日小屋から朝日岳までは、ゆっくりと登っていく。難しいところもなく、歩きやすい。その山頂からは、白馬方向の景色がよく見えた。

朝日岳の山頂から吹上のコルまで下りて、ここから栂海新道に入る。どんな道であろうかと気を引き締める。上部は、ぬかるんだ道であり、何回か転んでしまった。

けれども、黒岩平までは、湿原に高山植物が豊かに広がっていて、和ませてくれる。今回の北アルプス縦断では、この辺りの植物が最もきれいであった。白馬も高山植物が有名であるものの、栂海新道には、それを上回るともいえる景観が静かに広がっている。夏の北アルプスの清々しい景色と空気をゆっくりと楽しむように、歩いていく。

黒岩山からは、湿原は終わり、稜線歩きが続く。奥多摩とどこか似ているような山容である。サワガニ山までも、穏やかな尾根であった。犬ヶ岳へも、一部やせ尾根はあったけれど、全体的には難しくはない。

北俣ノ水場は、ルートマップでは、往復10分とされていたが、もう少し長く感じた。それに、水がしたたっていて滑りやすい道であった。水場は、小さな湧き水である。

栂海山荘で少し休み、白鳥小屋に向かう。マップでは、4時間の行程であるため、楽に歩けるかなと思っていたが、けっこう苦戦してしまった。稜線自体は、それほど難しいものではないが、アップダウンがかなりあり、きつい。それに、ザイルが垂らしてあるような急な登りも、何ヵ所かあった。また、今日は、地上は猛暑日であったようで、標高も大分下がり、とても暑く喉が渇いていく。

黄蓮ノ水場は、マップでは、涸れることもあり、とされていたが、水は豊富に流れていた。喉を潤すとともに、今日と明日のための水を確保した。

再び歩き始めたものの、体力がかなり失われていて、ゆっくりと、少し立ち休みをしながらでないと、歩くことができない。加えて、今日は、何回か転んでしまったため、足が痛い。少し、くじいてしまったようだ。そのため、バランスを崩して、また何回か転んだ。いつまで歩くのだろうと思いながらも、足を前に進めていくと、白鳥小屋の水場に着いた。これで今日の行程も終わりだと、一安心する。この水場には、水はあまり流れていなかった。

白鳥小屋は、思いのほか立派な2階建ての小屋であった。一度焼失してしまったことがあり、再建されたようだ。中もきれいで、ブルーシートや毛布等が常備されていた。小屋の記録ノートがあり、暇であったので読んでみると、坂田峠で車を停めて登ってくる人が多いようである。私自身の今回の縦走の概要についても、ノートに記しておいた。

日本海に落ちていく陽が紅の輝きを映し出している。地上は見渡せるところにある。明日こそは、ついに下山することになる。

この日、白鳥小屋には、他の登山者は訪れず、貸し切りであった。

9日目|白鳥小屋~親不知

行動食を朝食代わりとして食べて、外が少し明るくなってから出発する。歩いていくと、足がやはり痛くて、バランスがうまくとれないことがあり、度々、転んでしまう。道もぬかるんでいるところが多い。栂海新道は、このぬかるみが最大の敵なのかもしれない。

シキ割には、ちゃんと水が流れていた。急坂をくだり、坂田峠に。ここで久しぶりに車道に出る。親不知までも、残りあと少しである。ここから先も、ぬかるみが強く、何度もこける。それでも、なんとかルートタイムと同じくらいの時間を要して下っていき、やがて、眼下に日本海の輝きが樹間から望まれる。今回の9日間の縦走の景色、出会った人々、楽しかったことや辛かったことが思い出される。本当にここまで歩いてこられたなんて。

そして、北アルプスの縦走路は、日本海親不知の輝きに尽きた。

 
 
 

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