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南アルプス厳冬期縦走(赤石岳~聖岳) 2015年12月26~31日

  • 篠原
  • 2015年12月25日
  • 読了時間: 11分

○メンバー L中山、川島、平野(光)、篠原

前日まで |前泊 富士見峠

今年の年末は、南アルプスの南部にあたる赤石岳から聖岳まで縦走することになった。赤石岳を超えると、途中で下山できないため、そこが課題の一つとなるルートである。

年末の山行までには、偵察山行を繰り返し行い、椹島、赤石小屋、赤石岳避難小屋に燃料や食料等をデポした。

12月25日の仕事が終わった後に、立川に集合して、車で静岡県の富士見峠まで行き、そこにテントを張り、前泊。

1日目|沼平駐車場~林道~椹島

朝食は、川島さんがラーメンとホットポカリを作ってくれて、体が温まる。沼平の駐車場まで車で進むと、車が数台停めてあった。

沼平はもちろん、そこから見える範囲の山々には全く雪がついていない。

ワカンを持っていくか迷うが、やはり、山の上の方は雪があるであろうし、そうであるとワカンがないと進めない可能性があるため、持っていくことにする。

沼平から椹島までは、今の時期は、椹島ロッジへのバスがないため、延々と5時間ほどの林道歩きが必要である。

歩き出しは、意外と寒く、手袋をしていないと、手がかじかむ。木々は落葉してしまっていて、景観に乏しくて、寂しいけれど、渓谷を横に見ながら歩いていく。登山道の山寄りに、ところどころ水場があり、そこで休憩する。

11月にもこの道を歩いているため、椹島には、予想より疲労を抑えて到着。

川島さんは、さっそく焚火の準備をする。ほかの3人は、水を汲みに行く。神社の辺りに水場があるということであるが、場所が分からず、大井川まで汲みに行った。水汲みから帰ると、すでに焚火がつけられていて、外で夕食をとる。

川島さんが、牛肉を持ってきてくれて、ステーキにして頂く。食事をしていると、雪も舞ってきて、寒くなってきたので、小屋の中に張ってあるテントに戻った。

小屋には、私たちのほかに単独行の登山者が1人泊まった。昨年も、赤石岳に挑んだようであるが、椹島から雪があり、ラッセルが強いられ、敗退したとのこと。

2日目|椹島~東尾根(大倉尾根)赤石小屋

外が少し明るくなってから、東尾根(大倉尾根)を登り始める。落葉の積もった道になっている。単独行者が先に出発したものの、荷物が重そうで、途中で追い抜かす。

1時間くらい行動して、最初の休憩をとる。尾根には、それなりの風があり寒いので、一段下がり風を避ける。

赤石小屋まで5分の2ほど登ってから、雪が出てきて、やがて雪道になる。トレースはない。やっと雪山の趣を感じられて、嬉しい。

「5分の3」の標識のところで休む。それより上は、ワカンは使わないけれども、ちょっとしたラッセルであった。

赤石小屋に12時に到着。

冬季小屋が建て替え中であり、本館の屋根裏を臨時の冬季小屋として開放していた。屋根裏は、窓はなく暗いけれど、隙間風はない。しかし、入り口に前室等は当然なくて、ドアを開けるたびに、冷たい風が入り込んできてしまう。

小屋から見た赤石岳は、雪をしっかりと纏い、遠目から見ても、沢に雪が詰まっていて、夏道は通れそうにない。明日は冬季ルートのラクダの背を行くことになりそうだ。

川島さんと中山さんが、明日の偵察に行く。

私と平野さんで水汲みと夕食づくりをする。

水場は、小屋から5~10分程下ったところにある。冬季でも利用できると聞いていたが、実際に行ってみると、水場のホースが氷の柱の中に埋もれていた。もしや凍ってしまって使えないと思ったが、ホースを引っ張ってみたら、氷柱から外れて、水もちょろちょろとではあるけれど、流れていた。全てが凍りついてはおらず、安堵する。

小屋には、椹島の小屋で一緒になった単独行者が14時半くらいに着いた。荒川三山の縦走を考えているようであるが、ラクダの背についてもあまり知らないようだ。

偵察に出かけた川島さんたちは、15時前に戻ってきた。途中でワカンも履き、富士見平までトレースをつけてきてくれたとのこと。やはり、夏道は通れないので、明日はラクダの背をルートとすることになった。

夕焼けになると、きりっと聳え立つ兎岳のシルエットが印象的であった。かわいらしい名前だけれど、山容は鋭く尖っている。

夕食は、またしても川島さんが、カルビとニンニクを焼いてくれて、盛り上がった。

3日目 |赤石小屋~ラクダの背~小赤石岳~赤石岳~赤石岳避難小屋

本日の目標地は、百閒洞であり、冬季ルートのラクダの背とラッセルもあり、行動時間が長い。そのため、まだ陽が昇らないうちに、月明かりとヘッドランプを頼りに、赤石小屋を後にする。

周囲の山々と空との境界に、しばらく一縷の深紅の輝きが灯り、それが解かれると、雪面や岩壁、木々の枝までもが橙色に染めあげられ、全てが陽光に溶け込んでいった。

天気は、気持ちのよい快晴。

富士見平で休憩する。赤石岳が黄金色に輝いていて格好良い。雪が深くなってきたので、ワカンを履く。

しばらく、ラクダの背ではなく、夏道を行く。この道は傾斜もそれなりにあるため、雪が付いている状態では、慎重に進む。

冬道の標識より先の11月に設置した赤テープのルンゼから、ラクダの背に取り付く。

ここからのルートは、雪、岩、藪があり登りにくい。尾根の上の方は、雪が深くなり、ラッセルが大変になる。ラクダの背には、風はあまりない。

しばらく登っていくと、ナイフリッジとなり、そこでアイゼンを履く。気持ちのいいリッジを慎重に渡ると、そこは、ラクダの背の核心部の岩場である。

ザイルを出して、中山さんがトップで行く。補助ザイルも設置されているようだ。

岩、補助ザイルなども頼りに1ピッチ登る。

その後は、比較的緩やかな雪稜である。コンテで登る。核心部の雪壁を抜けても、小赤石岳の山頂は、遠く感じる。

しばらく雪稜を進み、小赤石岳のピークに達した。ここでも風はあまりなかった。

そこから望む赤石岳は、夏の様相とは打って変わり、厳冬期に備えて白銀の衣をしっかりと纏い、圧倒的な輝きで荘厳と聳立していた。

小赤石岳から鞍部に下りて、赤石岳の頂を目指す。ところが、小赤石岳では弱かった風が、稜線を下っていくと相当強力な西風になり、頬の辺りが冷たい。

強風に苦しめられ、ピッケルにもたれたりしながら歩いていく。小赤石岳から赤石岳までは、夏では1時間のコースであるものの、長く感じる。

ふと見上げると、先行していた川島さんが赤石の山頂から、こちらをじっと見つめている。ずっと待っていて寒そうだ。

なんとか赤石の頂に到る。写真を撮ったら、寒いので赤石岳避難小屋に駆け込んだ。

小屋の到着は14時。私や平野さんも疲れていたので、本日は百閒洞までは行かず、赤石岳避難小屋に泊まることになった。

赤石岳避難小屋は、寒いことに定評があるのか、今回もとても寒い。小屋の中にテントを張り、ストーブを焚く。

今日、赤石岳避難小屋を目指すと言っていた単独行者は、結局小屋には来なかった。おそらくラクダの背で諦めて、退去したのであろう。

4日目 |赤石岳避難小屋~百間洞~大沢岳~中盛丸山~兎岳~

     兎岳避難小屋

外が明るくなってから、アイゼンを着けて出発する。今日は、兎岳避難小屋までの長丁場である。

周りの山々と雲海が、曙光によって薄紅色に染めあげられ、厳冬季の雪山にいることを忘れてしまうくらいに、穏やかに広がり幻想的である。

小屋からしばらく下り、トラバースを経て、馬ノ背に到る。稜線よりやや下のところを進む。ラッセルがあり、藪を踏み抜くところもある。

百閒平の手前では、雪がかなり深くなっていた。百閒平はだだっ広く、道が分かりにくい。

百閒洞で最初の休憩をとる。風を避けられるところがなくて、2時間半くらいは行動し続けたため、疲労を感じた。平野さんも、休めなかったため、疲れて歩くのが遅れていた。

​川島さんが百閒洞山の家を見に行った。水もあり、使えるとのこと。

百閒洞までに、予想より時間がかかったため、赤石岳に引き返すことも含めて、今後の予定について話し合った。結論として、今日は兎岳避難小屋を目指し、ペース的に到着できなさそうであれば、中盛丸山と小兎岳のコルにテントを張ることにした。

大沢岳への登りは、下部は樹林帯であり、相当な雪があり、ラッセルに苦戦する。しかし、夏道に出ると、雪は大分減った。私と平野さんは、足の裏や指を痛めたこともあり、登るのが遅れてしまう。

大沢岳へのコルにトラバースして、稜線を登っていく。痩せているけれど、危ないところは少なく、頂に立った。

ここから兎岳避難小屋までは、ギャップを何回か登り下りする。川島さんが先行して、トレースをつけてくれる。稜線には雪は少ないけれど、藪を踏み抜いてしまうところも多い。

中盛丸山は大きく、これを通過するのに、足の調子が悪いので、体力を使う。

小兎岳と兎岳のコルで最後の休憩をとり、一歩を踏み出すのに苦労しつつも、兎岳に登頂した。

頂から下り、兎岳避難小屋に16時前に到着した。小屋は、入口辺りには雪があったけれども、中には雪が積もっておらず、使用することができた。

小屋の隣には、聖岳を登り、荒川三山まで縦走するという単独行者がテントを張っていた。

今日は、私と平野さんが、足の裏、指等を痛めていた影響等もあり、遅れてしまった。天気がよくて、目標の兎岳避難小屋まで到達できたのが、幸いだ。

5日目 |兎岳避難小屋~聖岳~奥聖岳~東尾根~ジャンクションピーク

外が明るくなってから出発。

本日は、今回の山行の核心部のうちの一つである聖岳とその東尾根を進むことになる。

聖兎のコルまでの下りは、痩せ尾根と岩峰のトラバース帯であり、中山さんがトップで行き、コンテで進む。ラッセルもそれなりにある。

聖兎のコルで休憩する。

コルからの登りの夏道は分かりにくい。ザイルをつけたまま、急傾斜の雪面を登っていく。雪は深くなっていき、途中からは、中山さんがザックを置き、空身でラッセルする。川島さんが、そのラッセルを替わり、ザックを背負ったまま登っていく。雪面の傾斜が緩やかになったところで、ザイルをしまい、2回目の休憩をとる。

この休憩場から上は、なだらかな稜線で、特に難所はない。この雪稜を歩いていけば、聖岳の頂上に到達できるという確信が駆ける。

2日前に登った赤石岳は、谷を挟んで高く聳えている。

振り返ると、歩んできた兎岳との深いギャップがある。

一歩一歩、確実に進んでいき、一箇所あったバックステップも無難にこなす。

そして、聖岳の頂に。

入山して5日目、稜線では風が強い中を登っていき、やっと現れた山頂に感動する。これが、今回の山行の最高に幸せなピークだ。

山頂の風はかなり強く寒い。寝そべったりして、風をよけたりして、平野さんが登ってくるのを待ち、皆で記念写真を撮る。

奥聖の方に下りていくと、二重山稜となっていて、風がない広く平らな場所で休憩する。

奥聖の地味なピークを過ぎると、聖岳の冬季ルートである東尾根になる。

出だしは、かなり急であり、まずは、両側がすっぱり切れ落ちたナイフリッジ。そこを過ぎると、急雪壁があり、ザイルを出してコンテで下る。難易度はそれほどでもないが、疲れているため、慎重に行動する。

難所を抜けると、とても気持ちよく見晴らしがいい雪稜歩きが続く。ザイルをしまう。トレースもしっかりしていて、快適である。空も澄み渡っていて、今回の南アルプス縦走を名残惜しむように、下っていく。

白蓬ノ頭を見渡せるところで、休みをとる。

白蓬ノ頭の樹林帯は、赤布も少なく、見通しもきかず、トレースがないと苦戦してしまいそうなところだ。けれど、今回はトレースがあり、スムーズに進めた。

私と平野さんは、足で痛めていたところもあり、下りに時間がかかってしまった。

ジャンクションピークより少し手前の平地を整地して、テントを張った。

無事にここまで下りてこられたことに、安堵する。残っている食料等で、最後の夕食が盛り上がる。

聖岳の山頂で拾ってきたという石を、川島さんから、頂いた。

6日目(最終日)|ジャンクションピーク~出会所小屋跡~聖沢登山口~林道

         ~沼平駐車場

外は薄明るくなりつつあるものの、樹林帯はまだ暗い頃に、ヘッドランプを点けて出発する。

ジャンクションピークには、ご丁寧にも、椹島と出会所小屋跡の分岐点の標識があった。

出会所小屋跡への下りは、道が分かりにくく、ルートファインディングが必要とされる。私と平野さんは、足が不調で少し遅れて、川島さんと中山さんが地形図を見てルートを確認し、下りていく。

出会所小屋跡に到達すると、後は一般登山道を20分程進み、林道に出た。

今日は、東尾根でも林道でも、何人かに出会った。昨年は、雪が深く、ラッセルに苦戦し、敗退し、そのリベンジに来ている人もいた。

単調な林道を3時間半くらい歩き、沼平駐車場に到着し、車で白樺荘の温泉に寄り、立川に帰ってきた。

感想

厳冬期の長期縦走であったけれど、終始天気がよく、風も全般的にはそれほど強くはなく、天候的には恵まれた山行であった。

赤石岳への、冬季ルート「ラクダの背」は、トレースもなく、魅力的な雪稜であった。赤石岳自身も、11月の偵察で見た姿からは、様相をかなり変えていて、美しく迫力があった。

聖岳とその東尾根も、縦走の最後を締めるのにふさわしい輝きと感動を持っていた。

山行自体は素晴らしかったものの、個人的には、足を痛めて不調であったので、次回からは、靴下による調整やテーピングといった予防もすることが大切であると思った。

 
 
 

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