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紅葉の穂高連峰縦走 2015年10月1~3日

  • 篠原
  • 2015年10月1日
  • 読了時間: 8分

○メンバー  篠原単独

前日まで |東京~松本

涸沢の最盛期の壮大な紅葉を見にいこうと思った。

涸沢は、穂高連峰の長野県側にあるカール地形であり、その紅葉は、日本の山岳で最も美しいともいわれています。この紅葉を楽しむために、シーズンには、おびただしい登山者が訪れ、涸沢もテント村のようになります。

紅葉の見頃は、年によっても異なりますが、9月末から10月上旬。

2年前にも、秋に涸沢を訪れましたが、その時は、本谷橋周辺が紅葉の最盛期であり、涸沢の盛りは過ぎていました。

今年は10月1日に上高地に入り、1日目は涸沢にテント伯。2日目に、北穂高岳~奥穂高岳の縦走。3日目に、涸沢から上高地に下山という計画をたてました。

しかし、天気予報が悪く、初日と2日目は、雨であり、それも相当強いものになりそうです。3日目は、晴れる予報のため、せめてこの日だけでも、紅葉を楽しめられれば、と考えました。

仕事を終えてから、夜のあずさに乗り、松本駅に11時50分程に到着。

1日目 |松本~上高地~涸沢

起床した時には、まだ雨は降っていませんでした。いつまで降らずにもってくれるか心配します。

松本から新島々行きの電車に乗っている人は少ないです。やはり、天気の影響でしょうか。

新島々から上高地へのバスに乗り換えて、車窓を眺めると、2年前とは異なり、この辺りの渓谷には、まだ紅葉の気配はないようです。

1時間程バスに揺られると、秋色に染まった穂高岳が飛び込んできて、そのスケールと存在感に、バスの乗客には感動が広がりました。

上高地に降りると、陽は射していないものの、穂高岳にガスはかかっておらず、展望はあります。けれども、本格的な雨がいつ降ってくるか分からない天気ですので、先を急ぎます。

自然探求路のコースを歩いていくけれど、渓流の水量も少なく、曇空でもあるため、景色はぱっとしない。

明神を経て、徳沢に着く頃には、雨が降り出してきた。

さらに、横尾を過ぎると、雨は本降りに。

屏風岩の厳しい絶壁の基部を、年に一度きりの祝宴のように、紅葉が色鮮やかに飾っているけれど、降雨のせいで、そこに輝きはない。

本谷橋でも、強く冷たい雨のため、ゆっくり休むことはできず、耐えながら涸沢まで登りました。

今夜は、かなり強い雨になる予報のため、テント泊にするか、小屋泊にするか悩みましたが、今のところ、風はそれほど強くはなく、また、悪天時のテントの練習にもなると思い、テント泊にすることにしました。

涸沢のテント場は、地面に石がゴロゴロしているところが多いですが、今日はテント泊の人が少ないため、あまり凹凸がない場所を探し、テントを張ることができました。

テント場の受付では、コンパネも貸し出していましたが、最盛期には、すぐに品切れになりそうな数しかなさそうです。

持ってきた野菜等でゆっくりと鍋をつくり、温まる。

ラジオを聞くと、この激しい低気圧は、当初の予報より早く、夜のうちに過ぎ去り、昼前には高気圧に覆われ快晴になるとのこと。どのタイミングで、快晴になるかは分からないけれども、せっかくだから、明日は、天気が良くなってから出発することにします。

その夜は、予報どおり、雨と風がとても強くなり、テントが飛ばされるのでは、と思ったほどでした。その激しさに起こされたり、眠ったりを繰り返しました。

2日目 |涸沢~北穂高岳~涸沢

朝起きると、爆弾低気圧自体はすでに通過したようで、風は弱くなっていました。しかし、空は依然としてどんよりとした灰色。雨も少しですが降っています。

予報では、この後に快晴になるため、それを待ってから出発しようと思い、朝食をゆっくり食べる。テントは狭くて体がこわばるので、涸沢ヒュッテに行ってみました。天気は相変わらずですが、皆それぞれのタイミングで出発していっているようです。

やることもないので、テントに戻り、昨日あまり眠れなかったので、仮眠する。

しばらく、まどろんでいると、テントの中に差し込んできた明光で目を覚ました。

慌ててテントを飛び出すと、そこには、涸沢の紅葉を着飾り澄みゆく秋空に岩峰群を突き上げる穂高連峰の威容があった。

その紅葉は、見事に色づき、穂高の山裾を三色の輝きで満たしており、見上げる空も気持ちのいい広がりで、そこに穂高の眩い白の岩壁や、鋭い黒の峰が映えています。

当初の予定では、今日は北穂高岳~奥穂高岳の縦走を考えていましたが、晴天を待っての出発となり、時刻は11時となりましたので、北穂高岳ピストンに計画を変更しました。

涸沢小屋の隣がルートの始点。そこに流れている沢が清々しい。

ルートの前半は、沢状の地形です。

周りには、ナナカマド、ダケカンバの紅葉で彩られていて、穂高の峰々とのコントラストが際立ち、美しい。

北穂高岳は、初めて登るため、紅葉と秋晴れも相まって、登山としての高揚感があります。

当初の天気予報では、今日も雨であったため、登山者が少なく、渋滞もなくて、快適でした。

ルートの左側には、前穂高岳の北尾根がダイナミックにスカイラインを描き出しています。その勇ましさには、幾度も目を向けさせられました。

ルートの難易度は、奥穂高岳より、やや難しく感じました。特に一箇所スラブ上の長い鎖場があり、少し難しい。他にも数カ所鎖場等がある。

コースの上部は、痩せ尾根となり、順調に高度を稼いでいき、頂に。

北穂高岳の山頂では、一気に視界が開けて、大キレットを擁する槍ヶ岳が天に向かいすっとその穂先を射ている。

岐阜県側の岩壁を覗くと、陰湿とした滝谷がある。

北穂の山頂は、丸みを帯びた広いところで、景観はすこぶる優れていますが、やはり風が強くて寒くなってきたので、北穂高小屋に下ります。

北穂高小屋のテラスは、とても素敵なところで、槍と大キレットがよく望めます。

しばらく、山頂と小屋での景色を楽しんでから、下山する。それほど時間がかからず、涸沢まで戻ってきました。

今夜も涸沢にテント泊。

3日目 |涸沢~奥穂高岳~前穂高岳~重太郎新道~岳沢~上高地~東京

本日も快晴の予報であるため、期待していた紅葉とモルゲンロートとの共演が見られそうです。

モルゲンロートがいつ始まるのか分からず、落ち着きなく待つ。

その訪れは、前触れもなく、静かにそっとやってきた。

奥穂高岳の岩峰が射し込む陽光によって橙色に燃え始め、やがて、その炎は、穂高連峰のドームに広がっていき、まるでナナカマドの紅葉の意を受けたかのように輝き始める。

涸沢にいた皆がその景色に魅了される。

爽やかなモルゲンロートを見送ると、奥穂に向けて登り始めます。

初めの方は、紅葉が回廊のようになっていて鮮やかな景色です。

ザイテングラードに向けてガレ場をトラバースします。

ザイテングラードの基部で一休みする。

ザイテングラードは、晴天に向かう白い尾根となっています。

今回は、テント装備を単独で持っていて、荷物が重かったけれども、人生で4回目のルートであるため、思いのほか簡単に穂高岳山荘まで到着できました。

しかし、そこからの鎖、梯子場、稜線は、西風が極めて強く、なかなかペースがあがらず、体力も消耗する。

風に耐えながら登っていき、奥穂高岳の山頂に。

山頂の東側には、風もなく広いスペースがあり、登頂者が皆、朗らかに喜びを語り合いながら、思い思いに休憩をしていました。

奥穂高岳の山頂は、これで人生3回目。ただし、去年の登頂時は、ガスで何も展望がなかったので、ここからの景色を眺めるのは、小学5年生以来の十何年ぶりだな、と感慨を受けます。

強風ですが、西穂高岳へ縦走している人もいました。

山頂から見る上高地は、まだ遥か遠くで、今日の残りの行程が思いやられます。

ザイテングラードなどで、いろいろと会話を交わした方々と別れの挨拶をして、前穂高岳に向かい、吊り尾根を進みます。

吊り尾根は初めて通るコースであり、なかなか難しいところとも聞きます。出だしは、ちょっとした岩場であったものの、徐々に急になってきて、鎖場もあり、ストックをしまいます。慎重に下りていかなければならなりません。

ただし、道は、稜線ではなく、トラバース道となっていて、その稜線のギザギザ具合よりは、簡単で安全なコースです。

紀美子平に着いて、休憩。「平」という名称ですが、それほど広くはなく、岳沢から上がってきた人が多く、大混雑となりました。

休憩してから、空身で前穂高岳に登り始めます。

ルートは、岩場が多いので、バランスを崩さないように意識して、岩をしっかり掴みながら進みます。

体力も消耗していて、傾斜がきつく、頂を遠く感じました。

それでも、少しずつ高度を上げていき、前穂高岳の頂に到着。

前穂高岳の頂は、ゴロゴロした岩でできた広場のようなところで、奥穂高岳、槍ヶ岳が望めます。

また、前穂高岳から派生する北尾根のギザギザした様相も見ることができました。

小学5年生で奥穂高岳に登り、今年の4月に残雪期の西穂高岳に登頂、今回の山行で北穂高岳、前穂高岳の頂を踏み、十何年越しに、穂高岳の頂を全て踏めたようです。

下山の時間が気になってくるため、紀美子平に下り、重太郎新道を行きます。

始まりから、スラブ状の鎖場で苦戦する。その後も、どんどん傾斜は強まり、しかも、その状態がしばらく続きます。難コースとは知っていましたが、想定より神経を使うところのようです。ずっと下に岳沢小屋を望むことができますが、やはり相当な傾斜が続いているようで、「カモシカ立場」でストックを出して、バランスをとりながら下っていきます。

梯子も多く、しきりに「事故多発!」等の注意書きがあり、慎重に慎重に下山していき、岳沢小屋にたどり着き、一安心して、休みをとります。

岳沢の紅葉は、涸沢のそれが円形劇場型のものであるの対して、奥庭に趣深く広がっているように、しみじみとした感動を与えてくれます。

テルモスに入れておいたミルクティーを飲み、上高地まで最後の下山に入ります。

この道は、とても歩きやすく、コースタイムより順調に進んでいきます。

途中にあった名所の「天然クーラー」は、それほどクーラーというほどのものではありませんでした。

無事に上高地の自然探求路の合流地点まで下りてきました。

1日目とは異なり、天気が良く、陽も注いでいて、水流がきれいでした。

梓川と穂高の清澄な秋の装いは、心に響くものがあり、しばらく眺めていました。

 
 
 

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